9月3日(木)開催のフラメンコライブに出演する阿部潤子さんが7月から8月までスペインへ行き、その時に感じたことをレポートしてくださいました。レポートでは伝わらない事は、フラメンコライブで感じさせていただきましょう!!
スペイン紀行 文/阿部潤子
この夏、私は鉄道を乗り継ぎドイツ・フランス・スペインとヨーロッパ縦断の旅をしました。
ここでは、私が感じたスペインを少しだけご紹介していきたいと思います。
フランス、パリから出発した夜行列車は、スペインの玄関口である首都マドリッドに到着した。
駅に降り立った瞬間、まわりの雰囲気や話し声などからフランスとは全く違った陽気さが伝わってくる。
駅の中に植物園があることで有名なアトーチャ駅からスペインが誇る新幹線「AVE」に乗り、アンダルシア地方・セビージャを目指す。セビージャまでの2時間半、車窓からは乾いた大地が広がり、ときおり現れるオリーブ畑やひまわり畑を見ることができる。
【セビージャ】
ここセビージャはオペラ「カルメン」の舞台でもあり、照りつける太陽、闘牛、フラメンコ…私たちがイメージするスペインがここにある。
そして、フラメンコを勉強する日本人の多くが、このセビージャの地を訪れるのだ。
私がはじめてセビージャを訪ねてから、もう10年近く経つ…
当時はまだ東洋人がめずらしく、町を歩いていると見知らぬ人から差別的なことを言われ、辛い思いをしたという話をよく耳にしたものだった。
しかし、今やネット社会、世界の距離がグッと縮まったおかげか町を歩いていても
荒れたままの石畳やいつ見てもいっこうに進む気配のない放置状態の工事現場も
そんな変化に驚き、記憶をたどりながら町を歩いたのだった…。
セビージャの夜
カーン、カーン、カーン…時を知らせる教会の鐘が鳴り響く。
夜10時、長い時間顔を出していた太陽がようやく沈んでいく頃、セビージャの夜はこれからが本番だ!町のシンボルでもあるヒラルダの塔の北側には迷路のように入り組んだサンタクルス街が広がっている。
その一角にある老舗のタブラオ(フラメンコを専門にみせるお店)「ロス・ガリョス」では、第一線で活躍中の踊り手や若手の踊り手たちによる情熱のライブが、連日繰り広げられている。
ふだんは地元のフラメンコ愛好家も訪れるこのタブラオも、夏のこの時期ヨーロッパ各国からの観光客でにぎわっていた。
外では、通りにならべられたBarのテーブルでワインを片手に話好きのスペイン人が大きな声を響かせながら食事を楽しんでいる。
ガラスケースに並ぶ数々の惣菜から好きなものを選び、小皿に盛って出してくれるタパスと呼ばれる料理や天井から吊るされた大きなハモンなど…
ここBarは明るくエネルギッシュなスペイン人の元気の源に違いない。
闘 牛
スペインには500以上もの闘牛場があるといわれている。シーズンは3月中旬~10月中旬だ。
かねてから一度は見てみたいと思っていた闘牛。
今回、ちょうど開催日にあたり見ることができた。
チケットはソル(日向)・ソンブラ(日陰)・
入場口では人気の闘牛士がサインを求められていた。
そして、いよいよ開始を告げる楽隊のファンファーレが鳴り響き、赤い扉が開いた。
生で見る牛の迫力に圧倒される。
マタドールがムレータ(赤い布)と剣を使い、自分の体すれすれに牛をかわす。
誰からともなく「オレー!」と掛け声がかかり、まるでマタドールと牛が踊っているかのようにリズミカルに舞うと楽隊がパソドブレを奏ではじめ、会場は一体となり興奮の渦に巻き込まれた。
そして、「真実の瞬間」がおとずれる。
静まりかえった闘牛場…ピーンと張りつめる空気。牛とマタドールがにらみ合う。
そして、牛の肋骨の間をめがけ、一瞬のスキをみてマタドールが剣を突き刺した!
この時、牛を苦しめずに一瞬でとどめを刺すことが見事とされ、何度も突き刺したり、なかなか倒すことが出来ない闘牛士にはヤジが飛ぶ。
闘牛の美学どおり優れた技をみせた闘牛士には、観客が白いハンカチを振って喝采を送るのだ。
だが、今回こうして闘牛を生で体験し、その場の空気を感じてみて、命をかけた緊張感、死というものに対する厳粛な美学、それを受け継いできた文化・歴史は、外国人の私が一言では言い表せないほど深いものなのだと強く思った。
太陽のような明るさ
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